第8回国際交感神経外科シンポジウム
2009年に開催された第8回国際交感神経外科シンポジウム
8th International Symposium on Sympathrtic Surgery (8th ISSS), NY, USA, 2009
2年ごとに開催される多汗症治療に関する国際学会です.各国から専門医が集まり,現時点での最も進んだ治療法と治療成績が発表されます.2003年はドイツ,2005年はオーストリア,2007年はブラジル,今回は米国ニューヨークで開催されました.私も2003年から4回連続して論文を発表し,今回はおだクリニックで行っている低位交感神経遮断(T4-ETS)の手術成績を発表しました.
低位交感神経遮断手術の有効性に関する手術後アンケート調査
おだクリニックで平成19年10月から平成20年6月までに低位交感神経遮断(T4-ETS)をお受けになった187名の患者様にアンケート調査を行いました.アンケートは手術から6~14ヶ月経過した平成20年12月に実施しました.
アンケート回収率 80.7%(151/187)
手のひらの汗は100%の患者様に減少効果がありました.手のひらの発汗停止,ほぼ停止した患者様は87.4%でした.夏の暑いときや過度に緊張したときに少し汗がでる患者様は12.6%でしたが,効果がまったくなかった患者様や逆に手のひらの汗が増加したケースはありませんでした.また,over drynessといって,手のひらがカサカサになって逆に悩む患者様もありませんでした.
手術前の多汗症の程度(Grade1~Grade3)と手術後の改善度には相関関係はありませんでした.
わきは手のひらとほぼ同様な効果があり8~9割で汗の減少効果がありました.しかし足裏の汗は1~3割程度の有効率でした.
夏の暑いときや運動後に代償性発汗は80%の患者様に出現しましたが,その程度はほとんど気にならない,もしくは中程度であり,過度な代償性発汗が現れたケースはありませんでした.
T4-ETS後の患者満足度は大満足が6割,満足が3割,やや満足が1割でした.やや不満と答えた患者様は3名(2%)で,手術後に少し手のひらから汗がでることに対する不満でした.そのうち2名の患者様はT4-ETSの半年~1年後に当院でT3-ETS(クリップ法)の追加を受けました.幸い代償性発汗はさほど増加せず,手のひらの汗は完全に停止して2回目の手術後に大満足されました.ほぼ全例の患者様が同じ悩みを持つ家族や友人にT4-ETS手術を勧めるとお答えになりました.
【結語】T4-ETSは術後に手汗がわずかに残存する症例もありますが,過剰な代償性発汗がなく患者満足度も高く,手掌多汗症で悩む患者様に対する第一選択になると思われます.