今回は鼠径ヘルニアの手術後にできることがある血腫について紹介します。血腫ななぜできるのでしょうか?また、できた場合の対処方法など書いていきたいと思います。
鼠径ヘルニア手術後に血腫ができる理由
血種とは出血した部分が固まって固体となったものをいいます。
手術ではヘルニア部分の皮膚を切ることになりますので、皮下の血管を電気メスまたは溶ける糸で結紮して切離します。血液成分には出血を止めるために凝固作用があるため、手術後は自然に止血されます。しかしなかなか止血されない場合には傷を塞いだ後も血種となって腫れが大きくなってしまう場合があります。血液をサラサラにする薬(抗凝固剤や抗血小板剤など)を服用している場合や、再生不良性貧血、白血病、クッシング症候群などの血液の病気などが血種を助長することがあります。
血腫ができた際の対応方法
手術翌日あたりからそれまでなかった皮下出血が見られ、皮膚が暗赤色になることがありますが、皮下出血はたいてい、自然に吸収されるのでそのまま様子を見ておくことが一般的な方法と言われます。
血種が大きくなったり、痛みが激しくなったりと症状が著しくなった場合には、再度患部を開き、止血することもあります。
その他の合併症
血腫以外に合併症と考えられる症状は以下があげられます。
・漿液腫seroma(しょうえきしゅ:セローマ)
ヘルニアとなっている部分の隙間を閉じる手術ですが、なかには多少の空間がのこってしまう場合があります。その部分に漿液性体液(リンパ液)がたまり膨らんでしまう状態のものです。
自然な吸収で消失することが多いのですが、大きな漿液腫ではまれに穿刺により漿液を吸引することもあります。
・感染
鼠経ヘルニアの手術では感染するケースはまれですが、手術ということで滅菌された器械や操作方法で行いますが、殺菌は無数なことにもより100%の無菌とはなりません。
細菌が創部で増殖する感染症や、人工補強材に細菌感染する場合などがあります。創部の軽度な感染症では抗菌剤や洗浄などの対処法で治癒することもありますが、感染が進行したり、人工補強材の感染症となれば再手術が必要となることもあります。
・疼痛
手術直後から数日の疼痛はやむを得ないものですが、鎮痛剤なども質が高くなり種類も増えてきたため、軽減しやすいと思われます。しかし鼠径部にはいくつもの神経が存在しているため、慢性的な疼痛を訴えるケースもあるようです。
鎮痛剤の使用から、効果がない場合には神経ブロック注射などの方法も行われるといわれます。
・再発
鼠経ヘルニアの再発率は専門医が手術を行えば0.5~1%以下です。原因というと、年齢や性別、ヘルニアの病態、生活環境などにおいて違いが生じますので一概に特定はできないのが現状です。再発した場合は初回の手術より手術が難しいため、患者様の状況において二度目の手術が適応かどうかの検討は専門医に相談し慎重に行っていく必要があります。
治療は患者様と医師との信頼関係を持って行っていくことが大切です。