第9回国際交感神経外科シンポジウム

第9回国際交感神経外科シンポジウム

2011年に開催された第9回国際交感神経外科シンポジウム
9th International Symposium on Sympathrtic Surgery (9th ISSS), Odense, Denmark, 2011

2年ごとに開催される多汗症治療に関する国際学会です.各国から専門医が集まり,現時点での最も進んだ治療法と治療成績が発表されます.2003年はドイツ,2005年はオーストリア,2007年はブラジル,2009年は米国,今回はデンマークで開催されました.私も2003年から5回連続して論文を発表し,今回はおだクリニックで行っている低位交感神経遮断(T4-ETS)の術後3年以上経過したの手術成績(アンケート調査結果)を発表しました.

低位交感神経遮断手術の有効性に関する手術後アンケート調査

おだクリニックで平成19年10月から平成20年6月までに低位交感神経遮断(T4-ETS)をお受けになった187名の患者様のうち,手術後1年後の第1回アンケート調査にお答えいただいた151名に第2回目のアンケート調査を行いました.第2回目のアンケートは手術から3年~3年半経過した平成23年5月に実施しました.

アンケート回収率 67.5%(102/151)

低位交感神経遮断手術(T4-ETS)1年後と3年後の手の汗に対する改善度
低位交感神経遮断手術(T4-ETS)1年後と3年後の手の汗に対する改善度

1.T4-ETS後の1年後のアンケート調査では手のひらの汗は100%の患者様に減少効果を認めました.手のひらの発汗停止,ほぼ停止した患者様は87.4%でした.夏の暑いときや過度に緊張したときに少し汗がでる患者様は12.6%でしたが,効果がまったくなかった患者様や逆に手のひらの汗が増加したケースはありませんでした.また,over drynessといって,手のひらがカサカサになって逆に悩む患者様もありませんでした.

2.T4-ETS後の3年後の結果もほぼ同様でした.手のひらの発汗停止,ほぼ停止した患者様は81.4%でした.夏の暑いときや過度に緊張したときに少し汗がでる患者様は16.7%と1年後に比べやや増加しました.3年間で2%(2名)の患者様が再発し,手術前とほぼ同じ程度に手のひらの汗が再びでるようになり,T3-ETSの追加手術を行いました.T3-ETSの再手術後には手のひらは再びサラサラになり代償性発汗の増加も中程度でした。

低位交感神経遮断手術(T4-ETS)1年後と3年後の代償性発汗の程度
低位交感神経遮断手術(T4-ETS)1年後と3年後の代償性発汗の程度

1.T4-ETS後の1年後のアンケート調査では夏の暑いときや運動後に代償性発汗は80%の患者様に出現しましたが,その程度はほとんど気にならない,もしくは中程度であり,過度な代償性発汗が現れたケースはありませんでした.

2.T4-ETS後の3年後の結果もほぼ同様でした.夏の暑いときや運動後に代償性発汗は73%の患者様に出現しましたが,その程度はほとんど気にならない,もしくは中程度であり,過度な代償性発汗が現れたケースはありませんでした.

低位交感神経遮断手術(T4-ETS)1年後と3年後の術後患者満足度
低位交感神経遮断手術(T4-ETS)1年後と3年後の術後患者満足度

1.T4-ETS後の1年後の患者満足度は大満足が6割,満足が3割,やや満足が1割でした.やや不満と答えた患者様は3名(2%)で,夏の暑いときや過度に緊張したときに少し汗がでることに対する不満でした.そのうち2名の患者様はT4-ETSの半年~1年後に当院でT3-ETSの追加を受けました.2名とも代償性発汗はさほど増加せず,手のひらの汗は完全に停止して2回目の手術後に大満足されました.ほぼ全例の患者様が同じ悩みを持つ家族や友人にT4-ETS手術を勧めるとお答えになりました.

2.T4-ETS後の3年後の結果もほぼ同様でした.大満足が5割,満足が4割,やや満足が1割でした.やや不満と答えた患者様は3名(2%)で,夏の暑いときや過度に緊張したときに少し汗がでることに対する不満でした.ほぼ全例の患者様が同じ悩みを持つ家族や友人にT4-ETS手術を勧めるとお答えになりました.

 低位交感神経遮断手術(T4-ETS)後に少し手汗がでる場合の神経分布の個人差
 低位交感神経遮断手術(T4-ETS)後に少し手汗がでる場合の神経分布の個人差

1.T4-ETS後に手のひらの発汗停止,ほぼ停止した患者様は85~90%です(左図).仮にこれらの患者様に最初からT3-ETSを施行していれば,顔の汗まで出なくなり,過剰な代償性発汗で手術を後悔していた可能性があります.

2.T4-ETS後に夏の暑いときや過度に緊張したときに少し汗がでる患者様は10~15%です(右図).左図に比べ,手のひら,顔の汗に対する神経分布がやや上方に位置してます.これらの患者様のうち,とくに手の汗の出方がやや多い患者様にT3-ETSを追加しても,顔の汗まで出なくなることはなく,T3-ETS後でも代償性発汗が少なくて済むと考えられます.

3.これまでに当院でT4-ETS後に手のひらの汗が少し出るためにT3-ETSを追加した患者様は全体の1%です.上記の神経分布の違いからT3-ETSの再手術後にも代償性発汗はさほど増加せず,手のひらの汗は完全に停止して2回目の手術後に大満足されました

【結語】T4-ETSは術後に手汗がわずかに残存する症例もありますが,過剰な代償性発汗がなく患者満足度も高く,手掌多汗症で悩む患者様に対する第一選択になると思われます.

お問い合わせ tel:092-534-7507お問い合わせ tel:092-534-7507 ネットで予約ネットで予約 診療カレンダー