2018.01.24更新

痔になる要因の一つは運動不足?

便意がある時だけ排泄するように、それ以外は肛門の筋肉によって失禁が起きないようにストッパーがかけられています。その機能を維持するために、粘膜も筋肉もあり、そして多くの毛細血管が集まっている部位でもあります。
この部分に便秘や下痢が刺激となって、うっ血や出血、炎症などを引き起こし、痔となってしまうのです。

痔の原因を考えるならば便秘や下痢を起こす生活要因が重要視されます。もちろん便は食物が消化吸収を経て残渣物となったものですので、食べ物や飲み物が関係してきますが、運動不足も大きな要因の一つにあたります。

運動するということは筋肉を使うことで、筋肉が働くと血液を送り出すポンプが活性化し全身の血液循環がよくなります。デスクワークや立ちっぱなしの仕事などでは、どうしても運動不足になってしまい、そこから肛門周囲の血行不良をはじめとした全身の血行不良や冷え性などにつながります。また腸には蠕動運動(ぜんどううんどう)といって便を押し出す自動運動がありますが、この蠕動運動も弱くなり便秘となります。
運動と痔では無関係のように感じますが、こうしてしっかりとつながっているものなのです。

 

痔になったら運動は禁止?

痔はいきんだり、刺激することで悪化するので、運動なんてもってのほか、静かに毎日を過ごすことが適切であると考える方もいるかと思います。痔の手術後などは別として、坐薬や軟膏などで保存的に治療している場合では、基本的に運動は必要と思われます。

特に内痔核では血管のうっ血が大きな原因となるため、適度な運動をすることで血行が促進され改善に向かうことも考えられます。
運動を禁止してしまうと、必然的に腸の蠕動運動も低下してしまいますから、便秘となり硬い便が痔に接触する、またはいきみが強くなり切れ痔の悪化なども引き起こしてしまいます。

もうひとつ、ストレスのたまりやすい人ではストレスが便秘や下痢の原因になることが大いにあります。ストレスは自律神経のバランスを崩し、「ノルアドレナリン」という物質を多く分泌させ、蠕動運動にブレーキをかけます。また悪玉なストレスホルモンを分泌させます。様々な方面から腸や痔にとってはマイナスな働きかけをすることになりますが、運動することによって、このホルモンの分泌を抑制したり、自律神経を整えたりとプラスに変えていくことが明らかにされています。
痔にとっては適度な運動が改善する手段のひとつとなるわけです。

 

どの程度の運動を心がければ良いのか?

痔に対する圧迫や刺激は最小限としながら、腸の蠕動運動や全身の血行を良くする運動が望ましい運動内容となりますが、難しく考えることはありません。

デスクワークなど同じ姿勢で過ごすことが多い方は、1〜2時間に1回くらいの割合で席を立って、体を伸ばしたりひねったりと簡単な体操をすることが、痔の圧迫の緩和、腸の動きの促進となります。

また仕事以外の時間で運動する場合は、移動時のエレベーターやエスカレーターに変わって階段を利用したり、休日ならば1日30分程度のウォーキングや、思い切って水泳なども効果的だと考えられます。

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2018.01.18更新

今回は身近な病気である痔について紹介します。
生活に支障をきたすほど悪化した痔であれば早急に治療を受けるかと思いますが、少々の痛みの場合は、痛みを我慢してしまい放置してしまっている方がいらっしゃるのではないでしょうか?痔を放置するとますます悪化してしまうことになりますので、注意をしてください。

 

痔を放置して悪化した場合はどのような経過をたどるか

直腸からゆるい便や水分などが、常時流れ出ていては生活上大変なことになります。こういったものを防ぐ役割をしているのが肛門括約筋や弾力性に富んだ組織となります。
この部分に大きな負担や刺激が加わると、「痔」が発症します。
痔には3種類あり、いぼ痔と呼ばれる「痔核」、きれ痔と呼ばれる「裂肛」、そして「痔瘻(じろう)」となります。

肛門と直腸の境目には歯状線というボコボコとした形状の部分があり、それを境に上部が直腸、下部が肛門となります。いぼ痔(痔核)では上部に生じた物を内痔核、下部に生じた物を外痔核といいます。直腸には痛覚がないため歯状線から上にできる内痔核だけでは痛みはありあせんが、悪化すると出血がひどくなり、時には肛門から脱出し脱肛となってしまう場合があります。歯状線から下にできる外痔核では痛覚があるため進行すればするほど強い痛みを伴うことになります。
裂肛では、排便時の刺激やその後にも痛みを伴いますが、進行し慢性的な裂肛になると傷が深くなり、ポリープのような突起物ができたり、肛門が狭くなってしまうことがあります。排便が怖くなるほどの痛みが伴うことがあります。
痔瘻では肛門腺に細菌が侵入し炎症を起こします。高熱がでたり、腫れや痛みが伴います。これが何度も繰り返されると瘻管といった膿がたまるトンネルが形成され、次第に悪化していきます。

どういった痔も悪化してからの治療では、治療内容も複雑化し、手術を施しても出血量が多くなったり、肛門の大きさが縮小するなどの後遺症が残ることがありますので、少しでも気になることがあれば放置せずにクリニックに相談されることをオススメします。

 

痔が悪化していく原因

痔が形成されても我慢できるレベルであったり、羞恥心が先立ってしまい治療せずに放置する方がいらっしゃいます。初期段階から進行する原因としては、痔の種類によって多少異なっていきます。
痔核においては、排便時のいきみが繰り返されることです。
肛門周囲は血管が寄り集まっているところであるため、いきむことで血液が一部分に滞ってしまい、腫れが生じます。いきみは排便時に便秘などの症状があるときだけではなく、重たいものを持つときなどにも起こります。

裂肛の原因は便そのものが肛門皮膚に刺激を与えてしまうことです。固い便ではもちろんのこと、下痢で勢いの強い排泄であっても皮膚を傷つけてしまいます。
痔瘻の原因は軟便や水様便などの繰り返しです。
歯状線には肛門腺が存在しており、便が無形に近くなればなるほど、歯状線の凹凸の表面に細菌が侵入しやすくなります。細菌が炎症を起こし、膿が生じていくことになります。

 

悪化しないようにするには?

痔を悪化させない方法としては、排便コントロールをしっかり行うことや、体の基本となる防御効果を高めること、肛門部へ負担の軽減などがあります。

下痢や便秘を無くすには排便のタイミングを逃さないことです。
朝の時間にゆとりを持ち、便意を感じた時にはすぐにトイレに行けるように、またいきみのない排便を行うには、3~5分程度の排便時間を持ちましょう。
また食生活も食物繊維を多く、適量な水分摂取を心がけることも重要です。

体の防御力を高めるには、疲労やストレスをためない、適度な運動を行うということがあげられます。痔の悪化の大敵は肛門部の炎症ですので、これらによって免疫力が低下すると炎症を起こしやすくなります。

体の冷えや飲酒、長時間の座位などは、肛門部の血行を悪くしてしまいうっ血につながります。冷房の調整や入浴を行う、アルコールの減量、姿勢の変換などを行っていくことも悪化予防となります。

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2018.01.10更新

今回は鼠径ヘルニアの手術と普段服用している薬の関係についてです。
脳梗塞の薬を服用している場合は手術はできないといった情報がありますが、それはどういうことかをご紹介します。

 

脳梗塞とはどんな病気か?

血管は体の器官や組織に栄養や酸素を運ぶための大切な通路です。その血管が血液内のゴミや脂が蓄積することで細くなったり(動脈硬化)、最終的には詰まってしまうなど、組織に必要なエネルギーが行き届かなくなります。その結果、脳の組織が壊死してしまうことを脳梗塞といいます。
脳梗塞は、どのようにして生じたかにポイントを置くと3つの種類があげられます。

 

・アテローム血栓性脳梗塞
血管の中を流れるコレステロールが残ってしまうことで、お粥のような物質となって血管壁に残ります。この層が徐々に厚くなって動脈の血管を閉塞してしまう脳梗塞です。

 

・ラクナ梗塞
高血圧になるごとに打撃を受けた脳の細い動脈が、少しずつ血管の閉塞を起こしていくものです。日本人に一番多く見られる脳梗塞で、症状が現れない場合もあります。

 

・心原性脳塞栓症
心臓の動脈や頸動脈などに生じた血液の塊(血栓)が、血流に乗って脳までのぼり、脳内の血管で閉塞を起こすものになります。

 

脳梗塞の症状は、壊死した組織が支配している部分に支障が出ます。
片側の手足のシビレや麻痺、感覚障害。ろれつが回らない言語障害や、言葉が理解できない失語症。目の前の半分の物しか視覚を通さない視野障害、歩行のバランスが取れない平衡感覚の障害などにあたります。

 

脳梗塞の治療に使われる薬は?

脳梗塞の治療薬は、閉塞した部分の修正ではなく、再発させないための予防薬となります。
血液の塊を作らないという原理の下で二つの薬が代表としてあげられます。
心臓のポンプなどが原因で血流が悪くなると、そこでも血の塊ができやすくなるため、血液をサラッとした状態に保ち凝固を抑制する「抗凝固薬」。
動脈硬化などが原因で起こる凝固は血小板が大きく関与するため、血小板をコントロールする働きの「抗血小板薬」となります。
抗凝固薬には、ワーファリン、ダビガトランなど。抗血小板薬には、アスピリン、チクロピジンなどがあげられます。いずれも脳梗塞の原因を判断し、それに合わせて選択されます。

 

脳梗塞の薬を服用していても鼠径ヘルニアの手術は可能か?

脳梗塞の内服薬では、血液を凝固させない作用を強めることで再梗塞の防止に努めます。
人の体は、小さなケガなどで出血しても自然に止血されるメカニズムとなっていますが、薬によってこういった働きを阻止することになりますから、手術などでは患部の出血が止まらないという状況も起こりうることです。
以前までは鼠径ヘルニアの手術でも、脳梗塞の内服を中止しなければなりませんでしたが、
技術の進歩により、薬を服用したままでも手術が可能となりました。
クリニックによって異なりますので詳しくはお問い合わせください。

 

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.12.26更新

今回は鼠径ヘルニアに似た症状がみられるヌック管水腫という病気について紹介したいと思います。

 

ヌック管水腫とはどんな病気?症状は?

笑ったり、何かしら力を入れた時にはお腹に力を入れることになるため、皮膚が張りお腹の形が見えやすくなりますね。足の付け根を鼠径部といいますが、そういった腹圧がかかった場合に、鼠径部の表面が一部の膨らみが生じたり、または常時膨らみが維持されることで異変を感じます。このしこりが主な症状となります。
ヌック管水腫(またはヌック水腫)とは女児に多く見られますが、成人の女性でも発症します。
お母さんのお腹で成長する際に、通常ならば自然に引っ込んでしまう腹膜鞘状突起という部分が鼠径部に飛び出したまま誕生します。飛び出した腹膜鞘状突起は袋状のもであって、そこには腹膜の中を流れる腹水が流出して、たまってしまうと男児及び男性では陰嚢水腫や精索水腫などと呼ばれますが、女児の鼠径部に生じたものは「ヌック管水腫」と呼ばれます。
2歳未満の乳児の場合には、自然治癒する可能性があるため経過観察されることが多いのですが、治癒することなく成人になると、合併症を起こした状態で治療をはじめられるケースもあります。とくに成人女性ではヌック管水腫に子宮内膜症が合併し、生理周期に伴い痛みやしこりが大きくなったりすることがあります。

 

ヌック管水腫と鼠径ヘルニアとの関係

ヌック管水腫はしこりだけを残したり、または時間によって大きさが変わるなどの変化がありながらも痛みや痒みなどの自覚症状はないというケースが多いです。しかし子宮内膜症を合併する場合は生理痛とともに鼠径部痛が生じます。
腹膜は内臓を覆っている袋となりますが、神経や靭帯などが通っている部分の隙間を利用して腹膜の一部が突出し、袋状となって存在しますが、ヌック管水腫の場合は液体であるのに対しヘルニアは腸の一部が、その袋に貯留します。
成人になってからの自覚症状としても鼠径部の膨らみや、その膨らみの増大などとなるため、鼠経ヘルニアとヌック管水腫の区別はつきにくいものです。
超音波検査やCT検査が有用であり診断手段となりますが、ヌック管水腫と診断されても実際には、水腫のみではなく、ヘルニアが嚢腫化し併存していたため誤診となったという場合もあります。

 

ヌック管水腫と診断された場合は?

乳児期にヌック管水腫、あるいは腹膜鞘状突起の閉鎖不全などと診断された場合には、1~2歳くらいまでは自然閉鎖の可能性が高いので、定期的な外来受診においての経過観察となります。しかしそれ以降、稀ではありますが、痛みも併発する鼠経ヘルニアの合併や、ヌック管水腫の下部にヘルニアが隠れていた、または炎症が起きている、子宮内膜症や腫瘍などが隠れているなどの可能性が秘められますので、多くは手術適応となります。
手術方式は鼠経ヘルニアと同様で、鼠経部を切開して行う方法と腹腔鏡を使用する方法がありますが、ヌック管水腫の場合は恥骨の横まで広がるヌック管水腫をすべて取り除く必要がありますので、通常は鼠径部を切開する手術方法が一般的です。

 

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.12.20更新

嵌頓とは?状態や症状について

小腸や大腸などの内臓は、腹膜という薄い膜に覆われてお腹の中にあります。しかし足の付け根である鼠経(そけい)部の筋膜の隙間から腹膜に包まれた腸が皮下に突き出てしまう病気を脱腸、正式な病名では鼠経ヘルニアと呼びます。お腹や足の付け根の皮膚表面には膨らみとして認められ、手で静かに押し込めたり、横に寝るとお腹のなかに腸が戻っていきます。しかしはみ出た腸が出たままになり腫れあがってお腹のなかに戻らなくなる状態を「嵌頓」、さらに血行が悪くなり腸が壊死する状態を「絞扼」と言います。
鼠経ヘルニアにも外鼠経ヘルニア、内鼠経ヘルニア、大腿ヘルニアと種類がありますが、外鼠経ヘルニアややせた女性に多い大腿ヘルニアでは嵌頓ヘルニア、絞扼ヘルニアを起こすことがあります。
嵌頓を起こすと、柔らかかった膨らみも硬くなったり、皮膚の色が変色したり、痛みなども伴います。嵌頓は慢性的な症状ではなく、絞扼まで進行すると緊急な対処を必要とする症状となります。

 

治療方法は?

嵌頓を起こしていない鼠経ヘルニアの手術であれば、鼠径部を切開するか、または腹腔鏡を使用して行うことになりますが、いずれも脱出した腸を元に戻し、メッシュで補強する方法がとられます。
しかし嵌頓ヘルニアになってしまった場合には、腸閉塞と同様の手術が適応されることになります。絞扼して脱出した腸が壊死している場合は、腹膜炎となり命の危険にもつながりますので、簡素な手術では適応できなくなります。
腸の壊死を引き起こしてしまうと、腸を切断しごくまれに人工肛門を作らなければならない可能性もあります。

 

小児の場合は?

通常は胎児のときに、開いている腹膜も自然に閉じられていくものなのですが、何らかの原因でヘルニアを持ったまま産まれるケースがあります。これが小児鼠経ヘルニアにあたります。小児のほとんどは1歳前後までには自然治癒するため、大泣きで腹圧をかけないようにしたり、便秘を避けたりしながら経過観察となりますが、嵌頓ヘルニアを起こしてしまうと緊急に医師の診察、もしくは緊急手術となります。
通常の鼠経ヘルニアは鼠径部の柔らかい膨らみが特徴的ですが、嵌頓ヘルニアを起こすと泣き方が激しくなったり、飛び出した膨らみ部分が硬くなり血色が悪くなったりしながら、押しても元に戻らなくなります。

 

放置するとどうなるか?

鼠経ヘルニアは、痛みがなければそのまま様子を見ることはできますが、嵌頓ヘルニアから絞扼ヘルニアを起こしてしまうと放置することはできません。腸閉塞状態となり、脱出した部分には血液も通わなくなるため、壊死と言って腸の組織が死んでしまうことになります。壊死した部分から全身の血液に菌が侵入し、敗血症から命に危険が及ぶこともあります。
したがって嵌頓ヘルニアさらに絞扼ヘルニアの放置は絶対に避けなければなりません。

 

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.11.30更新

鼠経ヘルニアといえば男性特有の病気に思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、女性にも生じる病気のひとつです。女性の鼠経ヘルニアは男性と比較すれば8:1程度と少ない数値ですが、年々増加傾向にあると言われています。
誰にでも起こりうる鼠経ヘルニアですので、どういった病気なのか把握しておかれると宜しいかと思います。

 

女性の鼠径ヘルニアの特徴

鼠経ヘルニアが生じる部分は、鼠経と呼ばれる足の付け根にあたります。男性では睾丸につながる血管や精管の通り道となる部分ですが、女性では子宮を支えるための強い靭帯が通過している部分にあたります。腸をはじめとした内臓は腹膜と呼ばれる筋膜に覆われて保護されていますが、いくつかの原因によって弱くなった筋膜の隙間から腸などの内臓の一部が皮下に脱出した状態を鼠経ヘルニアといいます。
この鼠経ヘルニアにも脱腸部分に沿って3つに分類されており、外鼠経ヘルニア、内鼠経ヘルニア、大腿ヘルニアとなります。多くの女性に見られるのが、このうちの外鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアといわれます。
男性は60歳以降と高齢層に多く発症するのに対し、女性では20~50歳代と広い年代に見られるのが特徴です。

 

鼠径ヘルニアと生理との関係

女性の鼠経ヘルニアでは、生理周期によって症状が変化するものがあります。
ヘルニアの部分が膨隆しますが、これは通常腹膜の中に流れている腹水がたまって起きるものや、腸そのものが脱出することで生じます。女性では生理中にこの膨らみが大きくなったり、痛みや圧迫感などを感じる方がいらっしゃいますが、子宮内膜症と関連するケースがあります。子宮内膜症とは、子宮内膜以外の場所に、内膜の組織が発生し増殖していくものです。生理のたびに大きくなったり痛みを伴なうといわれます。ヘルニアの膨らみがホルモンの変化に合わせて大きく変わる場合は、この子宮内膜症がヘルニアの膨らみに入り込んでいるためといったことが少なくありません。

 

年齢での症状や病状の違いは?

20歳代から40歳代までの若年女性の鼠経ヘルニアは、外鼠径ヘルニアのケースが多いです。鼠経ヘルニアには嵌頓(カントン)症状といって、皮膚表面に膨らみが生じ、元の位置にそれを押し込もうとしても戻らない現象があります。この嵌頓症状は見られず、痛みを伴なう方が多く、また生理周期によって痛みやふくらみの大きさが変化する症状が出ることもあります。
50歳代以降の中高年女性の鼠経ヘルニアでは、外鼠径ヘルニアのほかに大腿ヘルニアが多く見られるようになります。これは下肢に向かう動脈や静脈が走行する筋膜の隙間からから脱出するもので、腸がはまりこんで元に戻らずに嵌頓症状を伴うことがあります。
嵌頓症状によって、激しい疼痛を伴い、脱出する膨らみも大きい固くなることがあり、脱出した部分が壊死した場合は、緊急手術が必要となる場合があります。

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.11.23更新

鼠径ヘルニアはなんとなくとも知られている病気ですが、「水瘤」という病気は聞きなれず症状や治療法などといったことは知らない方の方が多いのではないでしょうか。
鼠径部の変化である病態、二つの病気の違いなどを見ながら、水瘤についてご紹介したいと思います。

 

水瘤とはどんな病気?

腸をはじめとした内臓は腹膜に包まれている状態で位置します。足の付け根には靭帯や筋肉が通っている部分があり隙間になりやすく、そこから腹膜が飛び出てしまうことがあります。この飛び出た腹膜(腹膜鞘状突起)に腹部を流れている体液が流れ出てたまったものを水瘤といいます。
水瘤は主に小児に多く見られ、先天性のものが多く、大人にも生じる場合がありますが、その場合には原因はわかっていないと言われています。
以前にはよく使われていた病名の陰嚢水瘤(いんのうすいりゅう)や精索水瘤(せいさくすいりゅう)と言われていたものを水瘤というようになっています。
流れ出た体液が貯留している袋が睾丸部であれば陰嚢水瘤、睾丸まで達していなければ精索水瘤となります。

 

水瘤の種類

腹膜と水瘤のある部分のつながりがあるかどうかで種類分けされます。
つながりのあるのは交通性の水瘤、つながりのないものは非交通性の水瘤と言われます。
小児の非交通性の水瘤は1歳になる前までには自然治癒の可能性が高く、たいていは様子を見ることが多いのですが、交通性の水瘤の場合は精巣機能の低下や精巣捻転が生じるリスクとなるので手術が適応されることが多いとされます。

 

水瘤の症状は?

患者様本人には痒みや痛みといった自覚症状はないと言われます。水瘤部分を外側からペンライトや懐中電灯などでひかりを当ててみると、透き通って見える。また触感としても弾力感があることが一般的な症状といわれます。
交通性の水瘤であれば、水のたまり具合も朝には少なかったのに、夕方には多くなってるなどの変化が見られたり、徐々に大きくなってくると歩行時に違和感を覚えることもあるケースがあります。

 

一般的な鼠径ヘルニアと水瘤の違い

鼠経ヘルニアと呼ばれるものも、水瘤も同じく腹膜が鼠経部のヘルニア門から外側へ出てしまうものですが、鼠経ヘルニアでは脱出した袋の中には腸など内臓の一部が含まれているのに対し、水瘤では単純に体液だけとなります。
鼠経ヘルニアではヘルニア門部分で、圧迫が原因となって血液循環が悪化し、腸が壊死を起こす危険性がともなってきたり、症状も痛みを有します。飛び出した腸などは一時的にでも元に戻すように押し込むことができる場合があります。水瘤では全く反対で、痛みもなく、押し込むという動作の還納が不可能となっています。
比較するならば、鼠経ヘルニアの方が緊急を要する病気となるケースが多いことになるでしょう。

 

水瘤の治療方法

以前は水瘤部分に直接針を刺して貯留したものの性状を確認し鼠経ヘルニアとの判別をしたり、たまった水を針で吸引するといった治療がありましたが、現在では超音波検査によって、診断が可能になりました。新生児の水瘤であれば1歳までは自然吸収の有無の可能性を優先し、様子を観察していきますが、それ以外では手術を用います。
交通性の水瘤では、鼠径部を切開し、水の貯留している鞘状突起を切断し陰嚢部への水の流出を防ぐ方法。非交通性の水瘤に対しては、陰嚢部を切開し、拡張している鞘膜の切除を行い再度貯留しないように縫合で対処するといったようなことが一般的な手術内容となっています。

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.11.13更新

今回は鼠径ヘルニアの手術後にできることがある血腫について紹介します。血腫ななぜできるのでしょうか?また、できた場合の対処方法など書いていきたいと思います。

 

■鼠径ヘルニア手術後に血腫ができる理由

血種とは出血した部分が固まって固体となったものをいいます。
手術ではヘルニア部分の皮膚を切ることになりますので、皮下の血管を電気メスまたは溶ける糸で結紮して切離します。血液成分には出血を止めるために凝固作用があるため、手術後は自然に止血されます。しかしなかなか止血されない場合には傷を塞いだ後も血種となって腫れが大きくなってしまう場合があります。血液をサラサラにする薬(抗凝固剤や抗血小板剤など)を服用している場合や、再生不良性貧血、白血病、クッシング症候群などの血液の病気などが血種を助長することがあります。

 

■血腫ができた際の対応方法

手術翌日あたりからそれまでなかった皮下出血が見られ、皮膚が暗赤色になることがありますが、皮下出血はたいてい、自然に吸収されるのでそのまま様子を見ておくことが一般的な方法と言われます。
血種が大きくなったり、痛みが激しくなったりと症状が著しくなった場合には、再度患部を開き、止血することもあります。

 

■その他の合併症

血腫以外に合併症と考えられる症状は以下があげられます。

 

・漿液腫seroma(しょうえきしゅ:セローマ)
ヘルニアとなっている部分の隙間を閉じる手術ですが、なかには多少の空間がのこってしまう場合があります。その部分に漿液性体液(リンパ液)がたまり膨らんでしまう状態のものです。
自然な吸収で消失することが多いのですが、大きな漿液腫ではまれに穿刺により漿液を吸引することもあります。

 

・感染
鼠経ヘルニアの手術では感染するケースはまれですが、手術ということで滅菌された器械や操作方法で行いますが、殺菌は無数なことにもより100%の無菌とはなりません。
細菌が創部で増殖する感染症や、人工補強材に細菌感染する場合などがあります。創部の軽度な感染症では抗菌剤や洗浄などの対処法で治癒することもありますが、感染が進行したり、人工補強材の感染症となれば再手術が必要となることもあります。

 

・疼痛
手術直後から数日の疼痛はやむを得ないものですが、鎮痛剤なども質が高くなり種類も増えてきたため、軽減しやすいと思われます。しかし鼠径部にはいくつもの神経が存在しているため、慢性的な疼痛を訴えるケースもあるようです。
鎮痛剤の使用から、効果がない場合には神経ブロック注射などの方法も行われるといわれます。

 

・再発
鼠経ヘルニアの再発率は専門医が手術を行えば0.5~1%以下です。原因というと、年齢や性別、ヘルニアの病態、生活環境などにおいて違いが生じますので一概に特定はできないのが現状です。再発した場合は初回の手術より手術が難しいため、患者様の状況において二度目の手術が適応かどうかの検討は専門医に相談し慎重に行っていく必要があります。
治療は患者様と医師との信頼関係を持って行っていくことが大切です。

 

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.10.29更新

今回は鼠径ヘルニアの治療後の再発についての情報です。
鼠径ヘルニアは再発する可能性がありますが、手術方法によって体への負担や再発率に違いが出てきます。どのような違いがあるのでしょうか?

 

鼠径ヘルニアは再発する可能性がある?

鼠径ヘルニアは、再発する可能性のある病気です。
再発の可能性については、破れた筋膜を縫い合わせる従来の手術方法だと、弱くなった筋膜が裂けるなどの理由で10%程度の確率で再発が起こるといわれています。
今現在、多くの病院で行われているメッシュで筋膜の穴を覆うメッシュ法の場合は、再発率は1%以下といわれています。さらに、当院で行なっているクーゲル法という筋膜の穴の下にメッシュを敷く方法の場合は、従来のメッシュ法よりも再発率を低減させることができています。
低いとは言えゼロではない再発率、再発した時の症状について紹介します。

 

再発した時の症状

再発した時の症状ですが、治療した部分と同じところに、手術前と同じようなふくらみができるというのが初期症状としてあります。さらに、ふくらみはなく、痛みだけという症状も、再発の可能性を持っている可能性があるので注意が必要です。
このように、「一度治療したから安心」とは言えないのが、鼠径ヘルニアと付き合っていく上での注意点だと言えます。

 

再発を予防する方法は?

鼠径ヘルニアの再発には、生活習慣も関係しています。
いわゆる「後天的要素による再発」というわけですが、少し工夫をするだけで、再発のリスクを防ぐことができると考えられます。
鼠径ヘルニアと関連があるのが腹圧の上昇です。お腹に余計な力がかかってしまう状態なのですが、重たいものを持ったり、立ちっぱなしの状態が長く続くと腹圧が上昇します。
さらに、筋肉が弱っていたから鼠径ヘルニアになったと考えて、筋力トレーニングを盛んに行う人もいるようですが、これも腹圧の上昇を招いてしまいます。
喫煙や肥満も鼠径ヘルニアの発症、再発と関連がありますので、心当たりのある方は生活習慣を見直されると宜しいかと思います。

 

このように鼠径ヘルニアの再発はゼロにすることはできません。
しかしながら、適切な手術方法を選択したり、生活習慣を見直す努力をすることで限りなくゼロに近づけることが可能とも言えます。
お聞きになりたいことがありましたら当医院にお気軽にお問い合わせください。

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

2017.10.22更新

下肢静脈瘤の治療法として、一番古くから行われていたストリッピング手術。硬化療法や血管内治療、弁形成術などの根治的治療の一種です。現在では高周波やレーザーなどの血管内治療が主流になりつつありますが、今回はストリッピング手術について説明していきます。

 

■ストリッピング手術とは?

ストリッピングとは英語で「剥ぐ」「剥ぎ取る」「引っこ抜く」などの意味があります。1900年台前半から100年以上行われたきた治療法で、弁が壊れて逆流している伏在静脈を、手術で抜き去ることで下肢静脈瘤を改善させる手術です。
鼠径部と呼ばれる足のつけ根、膝部分の2ヶ所をメスで2cmほど切開し、伏在静脈に手術用のワイヤーを挿入して血管と糸で結び、ワイヤーごと静脈を抜き取ります。

 

静脈を抜き取ることによって血液の流れが良くなり、下肢静脈瘤が改善していくという仕組みです。切開するので全身麻酔や下半身麻酔のため、数日間の入院が必要です。
しかし最近は局所麻酔や下肢静脈瘤の状態によって、短期入院や日帰り可能な病院も増えています。


高周波やレーザーなどの血管内治療が普及し、ストリッピング手術を選択する患者が減少しているのが現状のようです。
ですが、必ずしも高周波やレーザーなどの血管内治療がすべての下肢静脈瘤に良いという訳ではありません。

 

■ストリッピング手術を選択するメリット

100年続く治療法として、安定した手術成績があるのが一番のメリットです。患部を取り除くので再発率が低いのも大きな特徴です。ストリッピング手術は費用が安く、術後の通院も少ないので経済的な面から考えてもメリットになります。

また、皮下脂肪が少ない細身の男性や血管が大きすぎる人、太い血管が酷く蛇行している人など、高周波やレーザーなどの血管内治療ができない患者にはストリッピング手術が有効です。静脈の中に血栓ができ、炎症で熱や痛みを起こす「血栓性静脈炎」の患者にも有効とされています。

 

■デメリット

高周波やレーザーなどの血管内治療と比較して、ストリッピング手術は体への負担が大きくなります。手術で切開するため手術痕が残り、その傷も比較的大きいものとなります。術後の痛みや出血、しびれなど神経障害の合併症を生じる場合があります。

手術時間も長く、入院を必要とするため早く日常や仕事復帰したい患者には厳しいかもしれません。

投稿者: おだクリニック日帰り手術外科

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